たかが小学4年生、されど小学4年生だ。小学4年生の子どもがそんなことを考えて、とても背負いきれない秘密を抱え込んでしまうことは、それはとても悲しいこと。
「でも皮肉なことに見なかったことにしようと瑠衣と泣きながら決めたその日から、あの2人のそんな姿を何度も見る羽目になってしまった」
小学4年生の2人が導き出した答えを邪魔するかのように、追い討ちをかけるかのように、何度も何度も目撃するようになってしまったと。
「次第に俺たちは帰りが遅くなってった。2人がどちらの家で事に及んでいるのかも分からない。だからどちらかの親が帰ってくるまで適当に時間潰して帰る。それが日常になった」
そうなってしまうのも仕方がない。
自分の親が不貞を働いている姿なんて、見たくないに決まっている。
「でもやっぱり、いつまでも隠し通せることじゃない。俺たちは隠してるつもりでも、大人たちは気付くんだ。何かを隠しているんだろうって」
「……」
子どもが思うより、大人は子どもの些細な変化に気付くもの。
普段の様子から、帰りが遅くなった事などを踏まえても気付くのは仕方がないのかもしれない。
「瑠衣の母親から相談を受けた俺の父親が調べあげた。俺たちが家に帰らない理由、それは家庭に何かしらの問題があるのだろうと考えて互いの家に監視カメラをつけた」
それが、2つの家庭が壊れた瞬間だった。
「それからはもうただただ修羅場。包丁だって飛んでくし、殴り合いも始まる。けどさ、子どもの前で修羅場を繰り広げる親たちを見て気付いたんだ」
その瞬間、奏先輩が微かに笑う。
それは酷く渇いた笑みだった。
「誰も、家族を守ろうとして知らないフリをしていた俺たちに言葉をかけない。ああもう、あの人たちには俺たちが見えないんだなって。包丁が飛んでいたって誰も俺たちを気にかけない。瑠衣がどれだけ泣き叫んだって聞きやしない。それどころか…」
その脳裏にはその日の地獄のような修羅場を思い出しているのだろう。渇いた笑みをそのままに、奏先輩は顔を歪ませた。



