あの日の空にまた会えるまで。



私の直球な質問に奏先輩は凍りついた表情を見せたけど、すぐに顔色を変えた。それは決意したような表情だった。


「……あの日を語るには俺の幼少期から話さなければならない。あおちゃんが思うよりもずっと重たい話だよ。きっと理解もできないと思う。でもそれでいい。あおちゃんは俺の話を聞いてもただ笑っていてほしい。それだけは先に言っておくよ」
「……はい」
「……まず俺には、両親がいない」

思わず「えっ」と言葉を漏らした。

目を見開くと、奏先輩が苦笑しながら話を続ける。

「いるのはいるけど、もう親子関係は破綻してて、母親には小学生から会ってないし、父親は医者ってのもあって体裁を気にするから俺が生きていく上で必要になる金だけは通帳に振り込んでくれるけど、もう何年も会ってない。向こうも俺に興味がない」

奏先輩は淡々と抑揚の無い声で話すけど、内容としてはとんでもない内容だった。

そんな家庭環境の中にいるなんて、あの頃微塵も感じなかった。そんな話をしなかったのもあるだろうけれど、そんなの想像すらしなかったから。

「けど、最初からそうだったわけじゃなかった。母親がいなくなる前はごく普通の家族だった。そしてそれは、生まれた時から一緒の瑠衣も同じだったんだ」
「…っ!」

瑠衣、せんぱい…

覚悟はしてた。瑠衣先輩の名も出てくるのだろうと、分かってた。そしてまだ、2人は一緒にいるのだと。

この時の私はどんな顔をしていたのだろうか。分からないけれど、私の顔を見た奏先輩は少し顔を歪めて目を逸らしたから、それなりに酷い顔はしていたような気がする。

「瑠衣とは生まれた時から一緒だって、話したよね。母親同士が仲良かったんだ。その流れでずっと家族付き合いを続けてた。出かける時も絶対俺の家族と瑠衣の家族で一緒に出かけてた。お互いの家を自由に行き来してたくらい仲が良かったんだ」


ーーーけどそれは、ある日を境に

突然に壊れることになった。