あの日の空にまた会えるまで。




たとえもう夜遅くても外はまだ夏らしい暑さに包まれている。それでもすぐそこには川が流れているためか少しだけ涼しさも感じられた。

指定された休憩所へと向かう足取りははっきり言って重い。けれど躊躇うことなく一歩一歩を踏み出しているということは『話を聞く』ことに悩みなんて微塵も残っていなかったからなんだろう。

話を聞くということにさえあんなに悩んでいたのになーとつい最近までのことを思い浮かべては苦笑する。

休憩所につくと、そこのテラスのイスに腰掛ける奏先輩の姿が見えた。気付いた奏先輩がニコリと笑って軽く手を上げる。私は足早にそこへと足を動かした。


「……すみません、お待たせしました」
「いいよ。俺も今来たとこ」

テーブルを挟んで、奏先輩の真正面のイスに腰掛けると、「はい」と奏先輩は麦茶のペットボトルを差し出してきた。

「え?」
「暑いから。水分補給ね」
「あ、ありがとうございます。ごめんなさい、私お財布持ってきてなくて…」
「いらない」
「そんなわけには……お財布取りに戻っていいですか?」

そう言って腰掛けたイスから立ち上がる。

「だからいらないって」
「でも、」
「ほんとにいいから。だから座って」
「……」

こんなやり取りでさえあの頃を思い出して少し泣きそうになるだなんて、ほんと馬鹿としか言いようがない。あの頃もよく奏先輩はお金を出してくれていたっけ。私がどんなにお金を差し出しても絶対受け取ってくれなかった。無理矢理カバンに入れたときは少し怒られたほどだ。些細なことで昔を思い出して、ほんと馬鹿。

有無も言わさないようなその視線に私は諦めてイスに体を落とす。

「すみません、ありがとうございます」
「…ん」

奏先輩はニコリと優しく笑って、自分の分のお茶のペットボトルの蓋を開けて一口飲んだ。

「…BBQ楽しかった?」
「あ、はい。楽しかったです。みんな良い人たちで」
「そっか」

そして静まり返る2人だけの空間。奏先輩をチラリと見てみると僅かに顔を強張らせていて、緊張が見て取れた。