「唯一の街頭通ったから更に暗くなるぞー」
「そんなこといちいち言わなくていいからあんたは適当に喋り続けて!」
「無茶振りかよ」
……と、その時だった。
川の水のせいか、滑りのある地面でズリッと足を滑らせてしまった。
「ぅ、わ…っ!」
「葵!?!」
そして私の視界はぐるりと回る。
「あおい!!」
真央の叫び声が聞こえたと思った時には、既に私は先ほどまでいた道とは違う場所にいた。
「葵!大丈夫!?!」
「無事か!?」
「葵ちゃん!」
悠斗が照らしてくれる懐中電灯の光を頼りにそこを見上げる。どうやら私は傾斜のあるところを滑り落ちたらしい。…最悪。服もぐちゃぐちゃだ。大きな怪我はしてないけれど、絶対擦り傷とか切り傷だらけだ。ちょっと、ていうかだいぶ痛い。
傾斜と言っても私が落ちたところはまだ浅かったのが不幸中の幸いだった。
「葵!」
「だ、大丈夫…痛いけど」
「骨折とかしてない!?」
「それは大丈夫…」
体中の汚れを払う私にみんなから安堵のため息が聞こえた。
「ビックリした…心臓止まったわ」
「私も…」
「ったく、何やってんだよ、焦らすなよ」
「ご、ごめん」
私もビックリしたっての。
「とりあえずほら、上がってこい」
悠斗がしゃがみ込んで手を差し出そうとしてくれた瞬間ーーー
「ーーー大丈夫?」
と、悠斗の手ではない、大きな手が差し出された。
「…っ…!」
その声は、聞き覚えのある声だった。
「……そう、せんぱい…」
心配そうにこちらに手を差し出すその人は、紛れもなく、奏先輩だった。
ーーー会いたい。
あの日聞いた言葉と声が頭に蘇る。
「……あおちゃん、手」
「えっ…あ、はいっ」
って、なんで私素直に手出してんの?
咄嗟に差し出された手に自分の手を重ねると、グイッと強い力で引っ張られた。引っ張り上げられた私は言葉も出ず、呆然と奏先輩を見つめる。



