「実習なに作ったの?」
「今日はパスタとかパンナコッタとかの洋食」
「なんのパスタ?」
「班で違うんだけど、私のところはカルボナーラだった」
「えー、いいなー。美味しそう!」
「疲れるだけだよ。もう飽きたわ」

真央は栄養士コースに進んでいる。毎日実験やら実習があるみたいで会えばいつも嘆いていた。実習がある日はお昼ご飯をわざわざ用意しなくて済むから、そこは有難いみたいだけど。どうやら作るメニューも本格的らしい。

他愛もない談笑を続けているとカレーが乗ったおぼんを持った悠斗がやってくる。

「お、立川もいたのか」
「あんた、またカレー?毎日毎日飽きないよねぇ」
「今日はチキンカレーだってよ。食うしかないだろ」

ワクワクした輝いた笑みの悠斗はまるで子どものようだ。好きなおやつを与えられた子どもに見える。

おぼんをテーブルに置き、ガタンと椅子を引いた瞬間。

「……悠斗」

悠斗の友だちがやってきた。

「お、なに?」
「わりーけど、さっきの講義のノート見して」
「お前、サボりすぎだっての」
「いいじゃん。俺とお前の仲だし」
「なんの仲だよ」

どうやら悠斗にとってこれは慣れたことなんだろう。否定の言葉も肯定の言葉も口にはしていないのに、まるで流れのように見せるつもりでいる。

「悪い、葵。また今度な。立川もまたな」

これまた突然に輪から外れることの多い自由人の悠斗なため、特に気にせず真央と2人で悠斗に手を振った。

「じゃあねー」

おぼんを持ったまま、友だちと歩く悠斗の背中を見送り、私はお弁当に手を伸ばす。

お弁当に詰める定番の食材を詰めているため特に代わり映えのない普通のお弁当。それでもやはり自分で作っているため明日はこうしようああしようとアイデアを頭に浮かべる。そんな私のお弁当を覗き込んで、真央は感心したように言う。

「葵は良くやるよね。毎日お弁当作って」
「それ、悠斗にも言われたよ。全く同じこと」
「えー、あいつと同じこと言ったの私?嫌だわー」

そう言って、テーブルに腕を伸ばして、伸ばした腕に頬を乗せる。

「てかさ」
「なに?」
「葵と悠斗はなんでより戻さないの?」
「なんでって…」
「別れて何年だっけ?高3なりたてのときだからまだ1年ちょいくらい?」
「1年半くらいかな」
「あんなに仲良かったのになんで別れるかなー…」

そういえば、悠斗と別れたと告げた時も真央は同じことを言っていた気がする。