冬休みが終わると、受験生である3年生はチラホラと合格発表も出ている中、いよいよ受験本番な人が多くいるため、登校する3年生は殆どが参考書やカードを熱心にめくっている。自分もあと2年もするとそうなるのかと思うと今から憂鬱になってくる。
奏先輩には、冬休みの間にメールを送った。
冬休みが終わったら話をさせてください、と。奏先輩からは分かったと短い一言が返ってきた。
正直言って何を話すのか自分の中でも整理は出来てないけれど、ただ一つだけ、ハッキリしていることがある。
好きだと。
好きですと、その言葉だけは伝えよう。
答えは聞かなくてもいい。返事もいらない。分かりきっているから、伝えるだけでいいんだ。自分の気持ちを伝えて、終わりにするだけ。そして前に進むんだ。きっぱりと終わりにして、奏先輩のいない生活を始める。
ーーー自分の中で消化することもできなかった恋を、どうやって終わらせんのさ。
今日で、中学生活初めての恋を、本当の意味で終わらせるんだ。
思わぬ人物と鉢合わせた。
「ーーー謝りすぎですよ、先輩」
私の顔を見るなり何度も謝ってくるその人に、思わず苦笑する。
「……本当はあの時、分かってたんですよね?蓮先輩」
目の前の人物ーー蓮先輩は小さくうなずいた。
奏先輩との繋がりにヒビが入ったあの日、教室にいると言ったのは蓮先輩だった。優しい笑顔の裏に隠されていた真実に気付くことは出来なかったけれど、蓮先輩には感謝している。謝られることなど何一つないのに。
「あの時、奏と瑠衣が一緒にいるのは分かってた。まさかこんなことになるとは思ってなかったけど…」
「蓮先輩はなにも悪いことしてないじゃないですか」
「2人が一緒にいるってことは、そういう場面を見られる可能性もあったってことでしょ。一緒にいるところに鉢合わせるだけだと思ってたのに、そこに気付けないで葵ちゃんを行かせた。結果、葵ちゃんは傷付いた」
ーーーそういう場面、か。
奏先輩と瑠衣先輩の口づけ合う姿が脳裏に浮かんで、キリリと胸が痛んだ。
でも、決して。
決して、蓮先輩のせいじゃない。
「確かに傷付いたけど、私が一番傷付いたのは、そこじゃないんです」
そう、それじゃない。
そんな2人を見てしまったのは嫌だったけど、傷付いたけど、そこじゃない。
「……私はただ、奏先輩が終わりにすると言ったのが、哀しかっただけで」
目を伏せる。



