それほどに2人はずっと側にいて、そして互いを見つめる瞳も優しく穏やかで、心の底から信頼しあい必要としていることが他人である第三者にも分かるのだから。
けれど、やはり本人である奏先輩にハッキリと告げられるのは少し安心感を覚える。本人の口から聞きたかったのだと、今更ながらに気付かされる。
幼馴染みという関係は、そういうものなのだろうか。
自分に幼馴染みという存在がいないから、奏先輩と瑠衣先輩の関係に理解がないのだろうか。
「瑠衣とは生まれた時から一緒なんだ。特別っていうのもそういう意味で特別なだけで、深い意味なんてない」
「本当に…?」
不安げに再度聞き返す自分に奏先輩が優しく笑う。
その笑みは、まるで安心させるかのような笑みだった。
「本当。だから、何も不安になることなんてないんだよ」
そう言って優しく頭をポンポンとされる。
「俺はさ、これからも、あおちゃんが良いのなら、こうして2人で会ってほしいって思ってる」
「っ」
「放課後も2人で遊びに行って、時々休みの日には待ち合わせして遠出するとかさ。あおちゃんが良ければ、だけど」
「そう、先輩」
「…やっぱ瑠衣が気になる?」
必死に首を振った。夢中で否定した。瑠衣先輩の存在はやっぱりどうしても住み着いて離れないけれど、こんな嬉しいことを言われるなんて思ってもいなかったから。
奏先輩がどうして私にそう言ってくれるのか、そんなの自分でも分からない。答えは奏先輩しか知らない。それでも今だけは奏先輩は私を選んでくれているのだ。それならば私はそれに甘えたい。
ただーーー側にいたい。
「そっか…」
良かった、とにこりと笑ってくれる奏先輩の表情はこれほどかってくらい優しい。
一瞬の沈黙が訪れた瞬間、大きな音を立てて夜空に花が咲いた。
混じり合っていた視線も今は互いに夜空に向けられていて、その瞳には綺麗な花火が映っている。
本当に、綺麗だと思った。
こんな綺麗な花火を2人で見ることができたのも、欲しかった言葉をハッキリと言ってくれたことも、全ては嘘なのではないかと思うことがある。自分が自分で創り出した夢なのでは、と。
ーーーけれど、此処にある。
夢ではない、幻でもない、確かな存在が。
隣に感じる優しい存在は、今この瞬間も確かにこの心に刻まれている。
「……綺麗ですね」
「うん。綺麗だね」
供に並んでこうして花火を見上げるこの時間に止めどない幸福を感じていた私を、奏先輩が一瞬顔を歪ませて見ていたことなどその時の自分には知る由もなかった。
ただ、この幸せな時間に酔いしれる私を、奏先輩はどんな想いで見ていたのだろう。



