あの日の空にまた会えるまで。



あまりの可愛さと綺麗さに思わず目が釘付けになる。

「気に入ってくれた?」
「はい!!ありがとうございます!」

元気よくそう返した。本当に嬉しかった。奏先輩がただの後輩である自分のために選んで買ってきてくれたものなのだと思うと嬉しくて堪らなかった。あんな些細な会話を覚えていてくれたのかと思うと、心の底から嬉しかった。やっぱり好きだ、と思わずにはいられなかった。

「どこにつけようかなぁ」

キーホルダーを眺めながらそう呟くと、奏先輩が言う。

「鞄につけたら?」
「え、でも、」

瑠衣先輩に見られるのは、と口から出そうになるのを慌てて押し止めた。特別な存在があげたキーホルダーをただの後輩が誰の目にも入る鞄につけるのは、それは少し躊躇われる。絶対に気にするに決まってる。

「……じゃあ、お出かけ用の鞄につけることにします」

にこっと笑った奏先輩が次に発した言葉には流石に言葉を失った。

「そしたら、今度休みの日に出掛けない?」
「えっ」
「鞄にそれ付けてるところ見たいし、休みの日に遊んだことないじゃん」

な、なにを言っているんだろう、この先輩は。

きょとんとする私に奏先輩が苦笑する。

「……いや?」
「そういうわけでは…」

あれ、なんだかこのやり取り、前にもあったような気がする。確か初めて映画を観に行った日、奏先輩に誘われた時にもこんな会話があった。

「あ、そうだ」
「な、なんでしょう」
「お祭り行こうよ。ちょうど良い機会だし」
「お祭りっ?」

奏先輩と2人で、お祭り?

それはもう完全に恋人同士のデートではないだろうか…

「る、瑠衣先輩と行かないんですか…?」
「瑠衣?なんで?瑠衣と行く予定ないけど」
「でも…っ」
「もしかしてお祭り嫌い?」
「好き、です」
「じゃあいいじゃん。行こ、お祭り」

なんだかんだで嬉しくて流されてしまう私が悪いんだろう、と心の中で思う。

奏先輩と瑠衣先輩の関係も分からないまま、心の何処かでは瑠衣先輩の存在がチラつくのに誘いを断りきれず流されてしまう。少しでも奏先輩の隣にいることができるならば、特別な存在がいるのだとしてもそれを選びたいと思ってしまう。

そう遠くない内、もしかしたら傷付いてしまうかもしれないのになんて哀れなのか。

そうは分かっているのに、それなのに頷いてしまう自分に苦笑するしかなかったーーー。