それからの私の記憶は無いに等しい。
気付けば私は自分の部屋のベッドにいて、隣の部屋には真央がいた。課題をしているのか私に背を向けてペンを走らせている。
「ーーー…真央?」
私の声に真央が振り向いた。
「葵っ」
ペンを置いて駆け寄ってくる真央に私は気だるさの残る体を起き上がらせようとモゾモゾと動いた。けれどそれも真央の手によって布団の中に押し戻される。
「起きちゃだめ。あんたまだ熱あるんだから」
「真央、なんで…」
真央がどうしてここに…?
「連絡もらったの…奏先輩に」
奏先輩。
その言葉に段々と記憶が冴えていく。
私が奏先輩に泣きながら懇願したこと、奏先輩からの謝罪、そしてこれで最後だと言った時の哀しい顔。思い出して涙が溢れそうになる。
「大丈夫?」
真央の心配そうな顔はどちらの意味で言っているのだろうか。
体調のことを言っているのか、もしくは奏先輩とのことを言っているのか。
私の様子から意図を汲み取ったのだろう、真央は一度だけ苦笑いして次は明るく話し出した。
「もうほんと心配かけるんだから。私の言う通りだったでしょ?まさか倒れるほど悪化するとは思わなかったけど」
「うん…ごめん」
「ご飯食べる?うどん買ってきたよ」
ゼリーとかもあるよ、と側にあった袋を掴んで高々と見せてくれた。



