私は小さく溜め息を吐いたーーー途端、後ろから伸びてきた手が私の腕を掴んだ。
今度はなに、と振り向くと真剣な顔をした奏先輩がいて、息を呑んだ。
「……あおちゃん」
前にもこんなことがあった気がする。あの時は蓮先輩が側にいた。
体調が悪いときに限ってこんなことが起こる。放っておいてほしいのに放っておいてくれない。会いたくないのに会いにくる。今日は厄日なのだろうか?
「熱、あるよね?」
「……」
さっきと同じことを話すのもしんどい。
「……大丈夫?送るよ」
2人してなに同じことを言っているんだろう。送ってもらわなくても1人で帰れるのに。
「俺が送るからいい」
奏先輩の言葉を聞いていたのだろう。祐飛さんが言う。
「お前、今から講義だろ。俺が送る」
「関係ない。葵ちゃん、行くよ」
……なんなのこれ。漫画やテレビの世界でモテ期がやってきた主人公かのような状況に本気で嫌気がさしてくる。早く帰りたいのに状況がそれをさせてくれない。祐飛さんなんて講義があるなんて一言も言わなかった。もう、放っておいてほしい。
目の前で意味の分からないやり取りをしている2人を置いて、私は歩き出した。
ほんと、疲れる。
「あおちゃん、待って」
「葵ちゃんっ」
もう我慢の限界だった。



