「…ありがとう、あおちゃん」
「いえ、全然」
少しの気まずさを感じながら、奏先輩と二人並んで図書室へと向かう。
うちの大学の図書室はとても大きく広い。沢山の資料や参考書があり、一般の人もよく利用している。なので私も図書室には頻繁に訪れている。
「あおちゃん、なんの参考書探してるの?」
「あ、えと、英語です」
「英語科だったっけ。すごいよね」
「そんなことは…」
「中学のときも英語は得意だったもんね。俺3年だったのに英語はあおちゃんに教えてもらってたし」
「…っ」
何気なく話した奏先輩のその言葉に、私のどこかが凍りついた気がした。
一瞬で脳裏に思い浮かべてしまう、あの頃の光景に何故か胸が苦しくなる。忘れる、割り切る。そう決めたはずなのに。
私が何も言わなくなったことで、気まずさの残る沈黙が訪れる。そんな私の横顔を奏先輩がどんな思いで見てたのかを知らぬまま、図書室へと向かった。無意識に歩を早めていたことにも気付かなかった。
暫くの沈黙のあと、図書室が見えてきたところで、奏先輩が足を止めて口を開いた。
「……ねぇ、あおちゃん」
足を止めていた奏先輩を振り返る。
そして、次に発せられた奏先輩の言葉に私は素っ頓狂な声をあげたのだった。
「蓮とは、本当に付き合ってないの?」
「……え?」
付き合って…って、蓮先輩と?
というか、それ前にも答えたと思うんだけど、どうしてそんなこと…



