「……ねぇ、ほんとどうなってんの?」
あれから半月が経ったある日、真央が問いかけた。その言葉の中には少しの苛立ちも含まれている気がして、私は若干顔を強張らせた。
真央の問いかけの意味を、私は知っている。けれどその答えは、私にも知らなかった。
「……分かんない」
「分かんないって…」
だって、本当に分からないんだよ。
どうしてこんな突然、
「ーーーあおちゃん!」
奏先輩がこんなにも私に関わってくるようになったのか。
呼ばれた方に視線を向けると、そこには笑顔で私に手を振る奏先輩がどんどんとこちらに近づいてきていた。
蓮先輩と2人でいた時に喫茶店の前で会って以来、それまでは校内で会うことはなかったのに突然に奏先輩をあちこちで見かけるようになった。
見かけるようになったというより、奏先輩が頻繁に私に話しかけてくるようになったと言う方が正しいのかもしれない。
私はこれに、戸惑いを隠せないでいる。
「……奏先輩」
「今から講義?」
隣にいる真央の存在など無いかのように奏先輩は真っ直ぐ私だけに視線を向けた。始めはそれにイライラしてた真央だけど、彼女曰く話しかけられたら話しかけられたらで更にムカつくから、苛立つけどそれで良いらしい。
「私はもう講義は無いです」
「じゃあ帰るの?」
「い、いえ、図書室に参考書を探しに行こうかなと…」
「図書室?」
「は、はい」
こうも連続で質問されると、相手が相手なだけにしどろもどろになってしまう。奏先輩と話すのは未だ慣れない。昔はあんなにも自然だったのに。
…と、心の中で思って、途端一瞬でそれを振り切った。あの頃の私と奏先輩はもういない。忘れると決めた。無かったものと割り切るんだと。ただの先輩後輩というものが分からなくなってきたからこそ、割り切るしかない。言い聞かせて、振り切って、ちゃんと、線を引くんだーーー



