「…違うから」
「へー?」
「……」
なんだろう、2人の意味深な会話は…
蓮先輩が何となく挑発的というか、意味深というか…何だか変に笑ってるし…なんなんだ?
「まぁいいや。帰ろ、葵ちゃん」
「は、はい」
「奏、じゃあなー」
奏先輩の返答など聞きもせず、くるりと踵を返して歩き出す蓮先輩の背中を慌てて追いかけた。
こんな急に切り替えられたら私もビックリするんだけど。蓮先輩の隣に並ぶと私は顔だけをゆっくりと後ろに向ける。
奏先輩はこちらをなんとも言えない顔で見ていた。
振り返った私と目が合うと、奏先輩はニコリと笑って、小さく手を振ってくれた。
私はペコっと軽く頭を下げる。
「ーーーまたね、あおちゃん」
その「またね」がすぐ訪れることを、この時の私はまだ知らない。



