渡せなかった手紙の行方

「島津君は優しいね。それを聞いただけで、私は嬉しいよ。手紙の件はいいの、もう」

「…そっか、よかった。……俺は千紘のことが好きだ。諦めが悪くてここまでやってきた」

私は彼のこと、何を見てきたんだろう。

何も見てなかった。最初は怖い人だと思っていたけど、優しい所もあると私は感じていたのに。

ここまで自分のことを好きになってくれる人は、現れるだろうか。

いや、いない。

私は吉澤君に私の感謝の気持ちを手紙で分かって欲しかった。

だけど、それだけじゃない。

私というものを見てほしかったんだ。

私はなぜか泣いた。理由など分からない。

誰かが私を見てくれている事実にただ嬉しかったんだ。