渡せなかった手紙の行方

最初は怖かったけど、彼は優しいということはわかってる。

「なんで島津君が知ってるの?」

「なら、屋上にきて」

島津君はそう言ってから、もう授業が始まるというのに椅子から立ち上がり出ていた。

私は島津君と話したのは一回だけ。

だけど、なんで手紙のことを知っていたの。

私は島津君のあとを追うように、屋上へ向かった。

バンっと、屋上のドアを開けた。

その日は、晴天で雲ひとつななかった。

「…中学2年生の時、吉澤に渡そうとした手紙盗んだのは俺だよ」

私が屋上に着いてすぐ島津君は話し始めた。

私は吉澤君に渡すつもりだった手紙が、なんで島津君が盗んだのかよく分からなかった。

「……なんで、手紙のこと…」

私は目を丸くして、島津君を見た。

「俺、見てたんだよ。教室の中で。だから」

島津君は気まずくなったのか、目をそらして私に言った。

「だからって……。……初めて、私として認識してくれたのは吉澤君だった。だから、私は感謝の気持ちを表したくて、手紙に書いたのに。どうして、そんなことしたの?」

私は眉を下げ、悲しげな表情をして、島津くんを見る。

「……初めて、千紘だとわかったのは、吉澤じゃないよ。俺が吉澤に教えたんだ。千紘が花に水やりしていること。だから、吉澤は千紘に声をかけたんだ」