シューベルトのことを話し、「私も音楽の才能がほしいな〜」と鳥本さんは微笑む。十分、あると思うんだけど……。

「歌、うまいと思うよ。さすが合唱部って感じで」

僕がそう言うと、「ううん、まだまだだよ!」と鳥本さんは首を横に振る。

「もっと上手になりたいんだ!だから、音楽の才能がある人の演奏とかを聴きたいの!!」

「才能?僕に?」

キョトンとする僕に、「響也くん以外に誰がいるのよ」と鳥本さんは不思議そうな顔をした。才能……。僕はただ楽しくてピアノを弾いているだけなんだけど……。

さすらい人幻想曲を弾き終わると、「次はこれ弾いて!」と鳥本さんはスマホから音楽を流す。聞いたことがある。車のCMで使われているものだ。

「私も歌っていい?」

「いいよ」

僕が鍵盤の上に指を滑らせると、第二音楽室にはまた新しい音楽があふれ出す。鳥本さんは息を吸い、歌い始めた。


さあさ どこかへ出かけよう
地図とペンを詰め込んで
悩み事だって 辛いことだって
君とみんなとあの景色を見れば
何かが変わるから