「昨日のミュージックスペシャル見た?」

「見たよ!××くん、超カッコいいよね!!彼氏になってほしい!!」

「××さん、新しい歌を発表してたね〜」

「うんうん!CD出たら買わなくちゃ!」

合唱部の友達、ということもあってか音楽の話で盛り上がっている。そのまま僕のことを言わないか、めちゃくちゃドキドキした。

幸い、鳥本さんが僕のことを話す気配はない。ちらりと後ろを振り向けば、鳥本さんは無邪気な笑顔を見せていた。



授業が終わり、僕は第二音楽室へと向かう。本当は僕だけの空間に誰も入れたくない。でも、行かなかったらバラされるかもしれない。それは嫌だ。

ピアノが弾ける人は同じ学年にも何人もいるだろう。でも僕は、ピアノが弾けるからってチヤホヤされたくない。注目されたくないんだ。

第二音楽室に入ると、すでに鳥本さんは待っていてくれた。窓に腰掛けて、アカペラで歌を歌っている。


夢であってほしいと願った
こんな結末望んでいなかった
後悔だけが僕の胸を焦がしていく
未来が見えていたから 全てを壊せたなら
君を苦しみから救えたかもしれないのに
僕はいくつ歳を重ねても強くなれないまま