名前だけでもかなりの羞恥心でいっぱいなのに……。
呼び捨てなんてっ……レベルが高過ぎ……。
でも…榊さんの顔を見る限り絶対に折れてくれはしないだろうな。
「ふぅ………なつ…め」
「……っっ」
「…っ。榊さんっ…顔真っ赤」
頬の当たりが真っ赤に染っていて…そんな顔されたら余計に恥ずかしい。
「おい…戻ってる」
「え?…あっ……夏目」
やっぱり癖っていうものは短時間でも身に付いてしまうもんなんだな。
無意識で榊さんって言ってしまいそう。
「……柚莉」
「?何ですか?」
「ここで言うのも……おかしいけど。言っておかないといけない」
「何をですか?」
ふぅと深い深呼吸をして何かを決心したように強い意志を持った目で見つめられる。
「俺…極道の家系だ」
ーーードクンッ
心臓が一気に飛び跳ねた。
……やっぱり。
なんとなく……予想はしていたけど、いざ言われるとやっぱりなんとも言えない気分になる。
「……なんとなく…分かってました」
「……え?」
「大きな門に若呼びでこの家のお偉い方なんですよね?」
「まぁ……そうだな」
家の廊下や庭ですれ違う度に色んな人が夏目に頭を下げていた。
その場面を見る度に確信はかなり固まっていって……。
「実際に知ると……そんな雰囲気はしますね」
「……軽蔑したか?……俺が怖くなったか?」
