ーーーーーートントンッ


「柚莉…起きろ」


耳元から低く優しい声が私を呼び戻す。


「んっ……榊…さん」


目の前には微笑む榊さんの顔……。


あぁ…安心する。

ここに榊さんがいると知っただけでとても心が温かい。



「……夕食だ…来い」


「夕食…?」


え…?

もうそんな時間?


「私…何時まで」


「5時間くらいだな…」


そんなにも……。


それより私も一緒に食べてもいいのかな?


さっきまであんなことがあったから…少し行きにくい。

榊さんはそんな私を見て気づいたように…優しい目を向ける。


「大丈夫だ、柚莉」


その言葉が耳に届いたとき…ゆっくりと顔を上げる。

そして…ゆっくりと微笑む。あなたと一緒に…。


そう…貴方の『大丈夫』は自信をくれる。

背中を押される…。

貴方の言葉に…どれだけの力があるのか。

まるで…ほんとに魔法にかかっているかのように……。


「…来い」


私の前に差し出された綺麗な手。

その手のひらに私の手を添える。


途端に…嬉しそうに微笑む榊さん。


「なんか……いいな」


「……え?」