「彩羽ちゃん!うまく描けない!教えて〜」

「どうやったらいいんだ?」

私がバラに凹みや影、少し濃い色などをつけていると、工くんや友達が助けを求めてくる。工くんたちの水彩紙はまだ下絵の途中だ。

「どうしたらお前みたいにうまく描けるんだよ」

工くんが呟き、友達もうんうんと頷く。私は「う〜ん……」と少し寂しくなった。

私は、みんなのような健康な体を持っていない。心臓の病気を抱えていて、幼い頃から入院することが多かった。何もすることのない病室で、気がつけば絵を描くことを趣味にしていた。気付いたら上手になっていたんだ。

「絵を描くことを楽しいって思うことじゃないかな?」

病室で絵を描いていた頃のことを思い出し、私は言う。

「うまく描こうとするんじゃなくて、自分が楽しんで描くことが一番いいんじゃないかな?」

病室の窓から見えた木の枝に止まっていた小鳥を描いた時、同じ病室に入院していたお姉さんの笑顔を描いた時、おばあちゃんが持ってきてくれたリンゴを描いた時、私はとても楽しかった。