驚く工くんの手を引き、私は絵画の説明をしながら世界中の名画を見て回った。

「これ、すげえ!人の顔が花や野菜で作られてる!」

工くんの指差す先には、まるで現代アートのような奇想な絵画。でもこれは全て十六世紀に描かれたものだ。

「ミラノ生まれのアルチンボルドの作品だね!果物や野菜以外にも、本や動物などを集合させて人の肖像画を描いたんだ。ハプスブルク家の宮殿画家にもなったんだよ」

アルチンボルドの作品は、独特でとても面白い。私の一番好きな画家かもしれない。

「あっ!これって美術の教科書の表紙になっている絵じゃないか?」

それは「夜のカフェテラス」という作品。作者はあの有名な人。

「ゴッホの作品だよ。彼の絵は、現代とは違って生きている時には一枚しか売れなかったんだって」

「なるほど……。日本の文学界で言うところの宮澤賢治みたいな感じかな。ゴッホといえば「ひまわり」があったよな」

「うん!ゴッホはひまわりの絵を七枚残し、そのうちの六枚が現像されているよ。ゴッホにとってひまわりはユートピアの象徴だったんだって」