準備。

私たちの高校では1年の夏休みに「校外宿泊学習」というのをやるらしい。簡単に言えば修学旅行の練習みたいなものだ。
そして今、それの準備をしている。
クラスで実行委員を決めなきゃいけないらしくて、私は1ミリもやるつもりがない。
だけど、クラスで一番の仲良し「風原 海(かざはらうみ)」に一緒にやろう!!と誘われてその大きな目をパチクリさせられたら断れない。まあ、楽しそうだしやるか〜。くらいの軽い気持ちで立候補した実行委員女子は私と海ですんなり決まったけど、男子がなかなか決まらないらしい。結局くじ引きになって見事に負けたのはクラスの一軍「佐藤 ひろき(さとうひろき)とあの蓮くんだった。なんとも唐突な事態に私は少し混乱したがチャンスかも。と思い頑張ろうと気合を入れた。実行委員活動1つ目、バスの席決め!先生の爆弾発言により、男女混合になってしまった……。みんなグダグダ言いながらもチャンスかも!?と思う意見も多いいみたいだった。実行委員は実行委員同士で隣になろう。という話になった。私は蓮くんの隣が良かったけどそんなの口に出せるわけもなく、グーッパで決めることになった。この一回にかけてっ……。私はパーに決めパーを出した。神頼みは効いたみたいで、蓮くんの隣になれた。
とりあえず一言、「よろしく^ ^」と言った時蓮くんはいつもみたいに綺麗な顔で低めの声で「よろしく。」と言った。その時直感で(うわあ、不安。)と思ってしまった。
まあ、その不安なんか置いといて、実行委員はまだまだ仕事があるらしい。とりあえず4人で仕事はこなしていくもこの、未だ蓮くんとはうまく話せずどうしたらいいんだろう…。と、戸惑うことばかりだった。
そんな私たちとは裏腹に海とひろきくんはもう、カップルかって噂されるくらい仲良しになっていた。(正直付き合ってるかは私も知らない…。)側から見ると完璧なその2人は理想そのものだった。まあ、こんなこと考えても蓮くんは話そうとしないんだけどね…
そんな中、ある日私は蓮くんと話すチャンスを手にした。
それは、雨の日だった。まだ春の匂いがかすかに残る5月頃、その日は大雨だったのにもかかわらず実行委員の仕事が山ほどあって、蓮くんは先生に呼び出されて、海とひろきくんは2人帰ってしまった。
やっとの事で仕事を終えて、帰ろうと思った時傘を持ってきていないことに気がついた。
そう言えば朝晴れてたかならなあ…とか思いながらどうしよう…。と考えていると後ろから足音が聞こえた。振り向くとそこには蓮くんの姿があった。
「何してんの?」そう蓮くんに聞かれ私は傘を持ってきていないことを話した。そしたら彼は、「一緒に入る?」と聞いてくれてやばいい…と思いながらも入れさせてもらうことにした。
緊張しすぎて何を話したかは、覚えていなかったけどこんな少女漫画みたいな話…あるんだ…と考えていたのは覚えていた。
あと1つ、彼が言った言葉をひとつだけはっきり覚えている。
「自分以外を信じられる人って死ぬ時は周りにたくさんの人がいて、幸せに見届けられるんだろうな」
彼がなぜこんな言葉を言ったのか。
どんな闇を抱えているのか私は気になった。
けれど私はその闇の中に自分と同じものを感じた。温もりを求めて入るけど人の温かみに実感したことがない。彼も同じ事を思っているのだろうか。そう思った途端息が、胸が、苦しくなった。自分でも何かわからず、困惑する。でも、ひとつ確かな事は彼も人に言えない何かを抱えている事だった。