螢。

季節は春だった。
桜がひらひらと舞う中私は今日も憂鬱な気持ちで学校に行った。
入学してまだ1週間…。
友達はできた。クラスにも馴染めた。
だけどなぜか心の中で何かを求めている自分がいた。
それが何かは分からないし、分かろうともして
いない。きっと私がどこかで求めているのは人の温もりだったから。友達もいるし家族もいる。でもそんな中で人の優しさを温もりを身をもって感じること
はなかった。高校はもちろん、中学の時もだった。小学校の時も保育園の時も。回りの子はいつも楽しそうに笑ってた。だけど、わたしだけ心から笑うことができなかった。親のせいでもないし友達のせいでもない、兄弟のせいでもなければ、学校のせいでもない。もう自分がよくわからなくなっていた。
入学式、はじめてのクラスで知らない人ばかりの中緊張しながら自己紹介した時もそうだった。

「星野 明日羽(ほしの あすは)です！
光ノ中学校からきました！趣味は映画鑑賞です！
中学の時は吹奏楽部でトランペットを吹いていました
よろしくお願いします！」

そんな言葉を言いながら作り笑いをしていた私をみんなは優しく微笑んで見てくれてるのに私は冷たい目で見られている。としか感じられなかった。そのあとこんな私に声をかけてくれた子もいた。仲良くもなれた。クラスにも馴染めた。だけど1人だけガラスの箱の中に閉じ込められたように、回りの子と壁を作っていた。そんな私だったけど１つ、いや、1人だけ気になる人がいた。
いつも凛としていて窓際の席で空ばっかり見つめている。触ってはいけない芸術品のように尊く気高いその人の名前は「水谷 蓮(みずたに れん)」と言った。黒髪で背は高くそれでいて威圧感を感じない謎めいた彼に惹かれていた。