「あいか?」



リビングに入ってきた湊人の声だ。




泣いてるなんてわかったらからかわれるに決まってる。



ごまかさないと。





「お前、泣いてる?」



近寄る湊人に、背を向けた。



「違うの。目にゴミがね」



ありきたりな言い訳も、言わないよりましかと思った。



でも、湊人は珍しく悟くんに詰め寄った。



「悟、何言ったんだよ。こいつが泣くなんてよっぽどだろ」



湊人、失礼よ。私だってフツーの女の子だよ。




「湊人がはっきりしないからだよ。はぐらかして、先送りにしてるから」



「なんで俺のせいなんだよ。今、関係ねえだろ」



「あいかちゃん」



呼ばれてびっくりした。なみだがひっこんだ。よかった。



顔をあげたら、悟くんがすごく優しい目をしてた。




「あいかちゃん、湊人はあいかちゃんが好きなんだよ」



「は?」




私と湊人のリアクションはまったく同じだった。
そこからの慌てかたも似てた。



「わ、私を?湊人が?いくら悟くんでも、悪いジョーダンやめてよね」



「誰がこんな。悟、言っていいことと悪いことがあるだろ。笑えないジョークはジョークじゃない」





悟くんは湊人をムシして、私だけ見た。


か、かっこいい!




「あいかちゃん、男はいくつになっても好きな子いじめちゃうんだ。広い心でゆるしてあげてね」



「おい!ふざけんな、悟!」



「ふざけてないよ」




悟くんは余裕たっぷりに笑った。王子様スマイルまぶしい!



それにひきかえ、湊人は慌てちゃってカッコワル。




パタンとドアの閉まる音がした。


ママが、うふふって笑ってる。


「ふふ。青春ねえ」


「ママ! いつから?!」