断る理由も見つからない。
だって何もかもが手に入ってしまうんだもの。

「どうして私なの?」

もう一度尋ねる。私を選んだことを後悔しないかと。彼は微笑んで

「寧々を選ぶ以外に誰を選べって言うの?」

とまっすぐ私を見つめる。

「仕方ないなぁ」

半分言わされたみたいな返事に、彼は納得がいかないらしい。

「槙じゃなきゃだめ、とか言えないの?」

「それ、必要?」

真面目にいろいろ考えていた私がバカだった。
相手は、王子とあだ名される男で、鷹野槙なんだった。

もうどうにでもなってしまえ!と思う。そう思えるのは、相手が槙だからだ。

投げやりではなく、相手がこの人だから。