頑なに拒否したものの、槙に言いくるめられて、湯船に浸かっている。

洗い場はふたつ、お風呂は屋根つきの半露天になっていて、2人でもゆったり入れる大きさ。

洗い場では槙がシャワーを浴びている。
ただ、シャワー浴びてるだけなのに、何なのその筋肉って言いたいぐらい絵になる男。

私はそれを見ないように、でもばっちり見ながら、この事態をどうやって切り抜けようか、恥ずかしくてこのまま溶けてしまいたい想い。

ざぶん、と湯船が揺れて、隣に槙が来たのがわかる。あがったら裸を見られてしまうし、一緒に入るのは恥ずかしいし。

困った。本当に困る。

なのに、槙は普通。というかリラックスしすぎというぐらい、温泉を楽しんでいるみたい。

「寧々の家にも露天風呂ある?」

家?ああ、実家の温泉旅館のことね。

「あるよ。山奥だから、景観ぐらいしかいいとこないの」

槙は目を輝かせて

「行きたいなぁ」

と甘えてくる。そんなに甘えても、実家のハードルは高すぎて、すぐ返事ができない。
すると両手で顔を挟まれる。

「かわいいなぁ。恥ずかしがってる寧々。でも顔赤くなってきたよ。のぼせる前にあがってね。見ないように努力するから」

言い終わると、唇に軽くキスしてきた。
油断も隙もない。でもそう言われるとあがりやすい。やっぱりこの人は私にすごく甘いのかもしれない。