「かわいかった」

耳元でささやかれて、もうなにも言えない。
責任ある行動をね、とほんの2時間前言われたはずなのに。

私たちはもう昼間っからベッドのなかにいる。

本当にペースを崩されて、もうよくわからないままにいつもこうなってしまう。今日は土曜日だし、いいっかあ。

私たちは随分、獣に近付いてしまっている。
ちょっと反省。

「婚約者って言ったの、びっくりした?」

槙はくっついたまま、私を離そうとしない。

「びっくりというか、槙はいつも突然だから」

「嫌?」

首を横にふる。嫌なわけない。けど、こんなに焦らなくても、大丈夫。もっとゆっくりって気持ちもなくはない。

「俺ね、決めてたの。この人だって思う人が現れたら、絶対その人と結婚するんだって」

この人だって思ったってこと?
どこらへんが?そこ、聞きたいけど。恥ずかしくて、聞けない。うん、まだ聞けません。

「それが寧々だから。ちゃんと決まってから、また言わせて」

こくん、と頷くしかできない。
この人はずるい。こんな状況で、いつも甘くて。私はいつだって溺れて足がついていないくらい。

また大きな手が、私の曲線をなぞっていく。
もう一度、波がやってくる。何度も何度も、槙以外のことを考えられないようになってはじめて、あなたは囁く。

「すごく、きれいだ」