鷹野に声をかけた。

「寧々さん、俺、こういうの買ってきました」

テーブルに出してきたのは、ワインとチーズケーキ。そして、サラダのようである。

キッチンからそれをみて、
「夜あんまり食べない人?」

「そういうわけじゃないですけど」

「手料理とか期待した?」

「いや、そんな」

「残業続きで料理する体力もなく、今日はスーパーでお総菜を買ってきたの。そんなものでよかったら、出すけど。でもたぶん鷹野の口には合わないかもよ?」

もう、自棄である。
だって手料理とか、今の今で無理だし、もう家の中にいるし、こんな部屋着だし。もう、あり得ない、とか何千回思ったし。

もう絶対ひいてる。
だってあの高級マンションに住んでるやつがなに食べてるかなんて、もう。手長海老のなんちゃらとかフォアグラのなんちゃらとかでしょう?

終わった。
今度こそ完全に終わった。