「とりあえず、最寄り駅にはついたんですけど。ここからどこを目指したらいいですか?」

は?なんで私の最寄駅を知ってるのよ。

「え?待って待って。なんで知ってるの最寄駅」

「宇沢と一緒の最寄駅でしょ?俺、あいつから何度か聞いてて」

宇沢とも繋がりあるのかよ。私のかわいい後輩なんだが…。

「宇沢は寧々さんの家いったことあるっていうから、宇沢に聞いてもいいんですけど」

「それはダメ!もう、ちょっと待って。迎えに行くから。来るなら来るって言ってよ」

ぶちっと電話を切り、下着とか洗濯物をしまいこみ(隠すとも言う)、駅へと向かう。

こんな姿をさらすなんぞ、本当に本当に不覚。
さすがに駅までは行けず、コンビニからまた電話をかける。

「今、駅近くのコンビニまで来たんだけど。分かる?」

「わかります、すぐいきます」

ほどなくして、スーツ姿の鷹野が走ってくる。相変わらず背が高い。浮世離れしてる、とはこういうこと言うんだなぁと思ってしまう。

「会いたかった」

鷹野はそのまま私を抱き締めてきた。
いやいやいや。ここ、コンビニの前。人いる、目立つ、ちょっと、なにしてんの君!

「1週間でしょ、大げさ」

どうにか離れてもらって、とりあえず、赤面した自分を落ち着かせる。

「かわいい、寧々さん」

だめだ。こいつ、私を無力化させる天才かもしれない。

「ここだと目立つから、歩こう」

歩き始めた私の手をすぐに繋いでくるあたり、本当にもう、なんというか。

「明日は午後から出ればいいって言うから、とりあえず、会いたくて」