全ては君の思うまま

タクシーに告げた行き先は、私の思っていたようなホテルではなかった。

高級住宅街に入っていくと、ひとつのマンションの前で止まった。支払いをカードで済ませた彼が降り、そして私も後に続く。

「ここ、どこ?」

おそるおそる鷹野に聞くと、

「寧々さんでもそんなに驚くことがあるんですね」

肩をすくめてマンションに入っていく彼を小走りで追いかける。いや、普通に驚くよ?だって、ここ、どこよ?

「ここに女性を連れてきたのは初めてです」

閉じるエレベーター、どんどん上に昇っていく。

「そんなに高い場所じゃないから怖くないですよ」

いや、高さの問題じゃなくて、家賃の問題よ。なんでこんなところに住んでるんだよ。
聞きたいことは山程あったが、敢えて聞かないでおこう、と思った。

「ここです」

エレベーターを降り、扉の前までいく。
鍵を開け、中へと促された。

広い。何もかもが広い。そしてきれい。
なんで、なんでこんなマンションに住んでいる?

「ソファに座って待っててください。お酒がいいですか?それともお茶?水?」

「これ、あなた1人ですんでるの?」

座るのも気が引けるくらい、広い。そして場違い。

「やっぱ、狭いですか?」

彼は申し訳なさそうに隣に立った。
狭いとか、思わないよ普通。

「まず、狭くない。広くてびっくりしてる。あと、水で。信じられなくて、ちょっと頭いたい」