「...ここ、か」 僕は琹の病室の前に来ていた。 彼奴のことだ。 能天気にヘラヘラしてんだろうな。 ガラリ、とゆっくりドアを開けた。 「...」 そこで目の当たりにしたのは、酸素マスクを付けて横たわる琹の姿。 そりゃ、そうか。 僕は力が抜けたかのようにベッドの傍の椅子に座り、麻酔で眠る琹を、じっと見ていた。 琹を見ていると、不思議な気持ちになる。 そして、嫌な思い出が蘇るのだ。 僕の辛かった過去が。 苦しかった過去が。 思い出したくもない過去が。