あたしを知らないキミへ

映画行ってデートした時も、「お腹空いてない?」「足痛くない?」「少し休む?」
電話した時も、「眠くなったらちゃんと教えて」「時間大丈夫?」
2人で会った帰りには、「家まで送るよ」・・。

そんな沢山の気遣いが、一緒にいる中でいっぱいあった。

「恵美加、今までありがとな!すげー楽しかったよ。俺・・もう少しここにいるから・・」

そう言って賢斗は、笑顔であたしに笑いかけたんだ。
「本当にごめん・・。そして、ありがとう」

あたしは、その場から走ってお店を出た。

ただあたしの中に込み上げてきたものは、賢斗を深く傷つけてしまった罪悪感だけだった。
全て気づいていたのに、賢斗はあたしを責めたりはしなかった。

そのことが余計に辛くて、涙が溢れてきた。
やっぱり、こんなことしたって誰も幸せにはなれないし、相手を傷つけるだけだったんだ・・。

「ごめん・・賢斗・・」

あたしは、道端でただ泣いていたーー。