あたしを知らないキミへ

その時、一瞬だけアンタがこっちを見たような気がした。

咄嗟にあたしは、違う方向を向いた。
それは、もしかしたらあたしの勘違いだったのかもしれない。
だけど、ほんの少しでもアンタがあたしの方を見てくれたのなら・・。

片隅だけでもいいんだ。
あたしの髪の毛のさきっちょだけでもいい。
アンタの目に映るその先に、あたしが映っていたのなら・・。

それは、あたしにとってこの上ないくらいの幸せなんだ。


そして、しばらく乗っていたらアンタの最寄りの駅に着いた。
アンタは電車を降りて駅のホームに向かった。

その背中が、どんどん遠くなっていくたびに切なさを感じた。

それから次に美麗先輩が乗って来る駅に着いて、案の定彼女は乗って来た。
美麗先輩の姿を見て、アンタの顔が浮かんだ。