「恵美加の好きな人ってどんな人なの?」
そう言って鈴華は、頬杖をついて聞いてきた。
「んー、しいて言えば・・クールであたしとは別の世界を歩いてるような人」
「えー!何それー。意味わかんなーい」
1人のクラスメートが、そう呟いた。
「よく分かんないけどさ、いつもあたしの一歩先を歩いていて、そいつはあたしが手を伸ばそうとしても、どうしても手の届かないところにいるんだよ。他の人とは、どこか違うオーラを放っててさ」
「なんかその人、芸能人みたいな人だね」
「あはは。確かに芸能人みたいかも。そいつ見た目はちょっとチャラいんだけど、笑った時は子供みたいに笑うんだよ。だから、その笑顔を見た時、本当はすごい良い奴なんだろうなって」
アンタの話を、今目の前にいる皆に話している時は、まるでアンタのことを知っているかのように思えたんだ。
あたししか知らない特別な人になったかのようだった。
でも本当は、アンタのことなんて何一つとして知らないのに・・。
その事実が、またあたしの胸をぎゅっと締め付けた。