スピードをつけた車の眩しいフロントライトの光が潤に向かって段々と迫ってくる。
真依の頭の中で弦音の音が響く。
危ないと気づいた真依が「潤!」と驚くぐらいの大きな声で叫ぶと同時に潤の顔をまっすぐに見て走り出す。
まるで、的を定めてまっすぐに飛んで行く弓のように真依が走る。
──真依、こっちに来たら駄目だ!
地面を蹴って走る真依の両足に力が入る。
──潤は、私が守るから。
潤には、いっぱい、まだまだ幸せになってほしいんだから!
──潤、私は恐くない、恐くないよ。
真依が両手を目一杯伸ばしてありったけの力で潤の体をぎゅっと抱きしめる。
──潤、生きて……。
──、真依。
潤が目を細める。
と、次の瞬間、車が強くぶつかり横転する音が辺りに響く。



