「──潤のお父さん、社長さんになったって、私のお母さんから聞いたんだけど、本当……?」
「ああ、本当」
「本当なんだ。へぇー、すごいねー!」
「別に。喜んでいるの、夏美だけだし……」
「そうなんだ。潤は嬉しくないの?」
「……嬉しいけれど。夏美に今夜の社長就任のパーティーには、俺は顔を出すなって、言われた」
「パーティー、何時からなの──?」
「午後6時30分から」
真依が腕時計を見て時間を確かめる。
午後6時ちょうどを針がさしていた。
「……もうすぐじゃない」
黙ったまま、まっすぐ前だけを見て歩く潤。



