クリスマスの夜に、ただ一つの願い事を

●夏美、父親がいない時に俺の亡くなった母親の悪口を散々言う。



俺の亡き母親の遺影を見ながら、




「あんたのさー、父親って、ただの美人好きなの?」



「お父さんから、ミス日本って聞いてたけどさ、別に大したことないじゃん……」



母親の悪口が続く。



「俺の母さんの悪口をそれ以上、言うな……」


俺は強く握りしめた拳を夏美の頬を目掛けて殴ろうとしたが、寸前で止めた。


「別に、殴っても良かったのに、私の顔……」


挑発をするような態度の夏美。



歯を食い縛り、怒りで目が血走っていた俺。



「くそっ……」




「あんたの誉めるとこって、亡き母親譲りの顔が良くてスタイルが良いってところかしらね。うーん、取り柄って……、綺麗な顔しかないわね。中身、からっぽそうだし……」



話をしながら煙草をふかす夏美。



嫌な煙草の煙を俺の顔に吹きかけて、狂ったように高笑いしながら台所に姿を消した。


煙草の煙が目にしみて、痛かった。