「それで?」屋上に着いたと同時にくらいに黒瀬くんが話を切り出してきた。

「これ昨日家に落ちてたんだけど…」

例のしおりを黒瀬くんに手渡した。

「ああ、結空の家だったのか。探してたんだ、ありがとう。」

「ねえ、それって大事な物なの?」

私は思わず聞いてしまった。

「ああまーな。昔大切な人に貰ったんだ。」

「…そう…なんだ」

「俺さ、小学校低学年の時引っ越したんだ。本当はこの近くに住んでたんだけど…」

「………!」


「そのお別れの時にさ、どうしたって離れたくなくて泣きわめく俺にその子がこのしおりをくれたんだ。」

やっぱりそうだ。黒瀬くんが…

黒瀬依弦…依弦…いづ…いづっ!

そうだ!なんで忘れてたんだろう。

何度も夢に出てくるあの子の名前。