白銀のカルマ

 私は、父の日の作文課題が苦痛だった。

みんなは自分の父親との楽しいエピソードを書いているのに、私にはそれが一切ない。順番が回ってくる時のことを今でも鮮明に覚えている。

『どうぞ読んで下さい』

『……書いてません』

〝何故書いていないの?″

書いていないんじゃなくて書けないんです。

〝お母さんのことでもいいのよ?″

そのお母さんは毎日お父さんのことを思い出して泣いています。

先生。私、〝普通″じゃないんです。

普通に笑い合っている家族の姿なんて、どれだけ頑張ったって思い浮かばないんです。

あるのだとしたら、それはもうどれも朧げな記憶。

家族の絵ですら私には何も描けない。

無いものは出せない。
私達親子は、父に悲しみで支配されているんです。

だから自分の娘・舞香が14歳の頃、置手紙だけ残して失踪した時、その複雑な気持ちを意外と簡単に察することが出来た。

娘は中学の先輩と逃避行を考えていたようで失踪から5時間後、ラブホテルの前で発見されたが、家に連れ戻した後も彼女は言い訳するどころか少年側を擁護し続けた。