白銀のカルマ

「……あ、誰かと電話してたんですか?」

「……例のヘルパーさんです」

「あぁ……あの人」

「今日限りで辞めるから給料も受け取る意思がないことを母によろしくお伝えくださいですって」

 優一は散歩の後、例のヘルパーと携帯電話で通話をしていた。

退院するまでの間、ヘルパーとして働くことになっていた千明だったが、急遽辞めることを自ら電話で息子に報告した。

自宅に帰ることを頑なに拒否する僕の気持ちを最後まで尊重してくれたヘルパーさん。

恵さんの墓参りで知り合ったと言うヘルパーの滝川千明さんは、自分達親子にいつでも献身的だったし、無職で住む家のない彼を自分なりに救いたいと考えていたその矢先、解雇されてしまった。

彼は辞める理由を明らかにしなかったが、その裏に母の存在があるのではないかと思うと非常に胸が痛んだ。

「……何でこのタイミングなんでしょうかね。千明さんが解雇されなきゃいけない理由が分からない…こんなのあまりにも酷すぎる…」

悔しそうに涙を流す優一に訳を話したかったが、何も言えなかった。

今、〝あのこと″について言えばおそらく親子間は修復不可能になるだろう。

追い詰められると必ずあの例の親子が〝何らか″の形で奥野親子に関わってくる。

息子の角膜手術の時も背に腹は代えられない状況での出来事だった。

あの親子に母が協力を得る時は、いつも苦肉の策であることを息子は知らない。