白銀のカルマ

『やめなさい、翼くん!光くん!』

 兄弟喧嘩に気づいた親類達は二人を止めようとしたが、その余地がないほど壮絶な殴り合いを雨が降りしきる中、庭先で続けた。

和解出来るチャンスだったのかもしれないが、自分達兄弟はそれすらも容易に足蹴にしてしまった。

「……まぁ、こんな感じなんだけどさ」

自身の壮絶な過去を話しきっても尚、ほとんど表情が変化しない水森を前にさっきまで取り乱していた自分の振る舞いが途端に恥ずかしくなった優一。

「……先生は……僕以上に大変な思いをされてたんだなぁって。僕、本当に冷静さが皆無なもんで……恥ずかしい。」

「……いや、こういうことに上下はないと思います。お母さんのことでこれまで心を痛めてきたことは伝わっています。それに奥野さんは、お母さんといくらでも向き合うことができる。僕は相手に対してそういった感情を持つことさえも出来ないから」

 絶望感しかなかった一日の始まりだったはずなのに、話し終える頃には自分の将来に僅かな希望を見出すことが出来た。

傾聴し、自身の過去を打ち明けてくれた先生のおかげである。

僕は先生にとても感謝していたが、暗い話が続いたことを罪悪感に感じたのか、気分転換に病院の庭の周りを一緒に散歩しないかと提案してきた。

近隣住民の方からお礼の代わりによくもらうと言う野菜畑の周辺を一周し、気分良く病院に戻る道中のこと。集団下校する児童がこっちに向かって挨拶をしてきた。

「こんにちはー」

「……今日も見回りご苦労様です」

 元気に挨拶をする児童の後ろを歩く襷掛けをした30代前半くらいの女性も、一緒に挨拶をしてくれた。

話によると、最近この周辺のエリアで成人男性が通り魔に顔面をハンマーで殴りつけられると言った物騒な事件が発生したのだと言う。

「あぁ、何かこの割りと近くで通り魔事件があったみたいでね。地域ボランティアの方がパトロールしてるそうだよ。」

田園風景を見ながらの散歩は心休まるものがあったが、こんな閑静な田舎町でも通り魔が発生すると思うと、どこに行っても気は抜けないなと感じた。