白銀のカルマ

『……別に』
『え?』
『そういう風に思うのはお前の勝手だ。……後、ちゃんと栄養摂れよ』

そう言って肩をポンと叩き、早々にその場から立ち去ろうとした。

兄のふてぶてしい態度にますます強い憤りを覚えた弟は、油断しているその隙に間髪いれず、タックルすると地面にねじ伏せ、顔を数回殴りつけた。

『人をバカにするのも、大概にしろよ!!!お前!!!』

 しかし翼はその程度では、一切動じなかった。

……気が済むまでいくらでも殴らせてやろうと言う心積もりでいた。

しかし、ある一言が事態を一変させる。

『母さんが家を出ていったのもお前のせいだ!!!』

 翼の体が一瞬、ピクッと動いた。

これは〝禁句ワード″だった。

幼い頃、自分の不注意で木から落下し、頭に数針縫う怪我を負った。

元々悪かった夫婦仲が、これが原因で一層険悪なものとなり、母が家を出て行くことになった。

幼い弟から母親を奪った罪悪感から、何を言われても黙ってきたが、例え弟が相手であっても簡単に腹に収めることは出来なかった。

受け身の体勢から鳩尾に不意打ちを食らわせると、怯んだその隙に馬乗りになって、弟の顔を数回殴りつけた。