白銀のカルマ

親父の通夜の日も魂が抜けた顔で、一人縁側で煙草をふかしていた。

死臭を漂わせる自分に誰も近寄ってこないだろうと思っていたが、確実にこちらに何かが近づいていた。

『……久しぶり。気分はどう?』

 その〝何か”は、少しやつれた弟だった。

痩せたことで更に際立った大きな目は、何かを言いたそうだったが案の定、俺に対する感情に溢れていた。

『……よく来れたね』

何度もメールや手紙で父の近況を伝え続けたのにろくに返事を返さず、姿を見せたと思えば、弱った父に追い打ちをかけた。在宅介護の間も他人事のような顔されたことに鬱憤が溜まっていた弟の怒りが、そう簡単に収まるはずもなかった。

『………僕にはいいよ。父さんには何か言うことがあるんじゃないの?……兄さんね、いっつもずるいよ……。都合が悪くなると黙り込んじゃってさぁ、昔からそうだよね?僕のことをいつも子ども扱いして、適当なこと言って納得させようとしたりさぁ。兄さんが頭いいのも知ってるし適わないのも知ってる。けど、何か一言あるんじゃないの?』

図星だったし、正論だった。

前々から自分に不満があることも知っていたが、それでも何も言い返すつもりはなかった。

自分と親父の関係は正論云々で片付けられるようなそんな簡単な問題じゃなかったからだ。

それにいつも〝兄さんは頭がいいからいいよな″とか〝兄さんは父さんに可愛がられていいよな″とか、口癖みたいに言ってくるが、俺を正しく理解出来る日はお前にも来ない。

話しても分かり合えないと言う諦めと今さら合わす顔がないという罪悪感が弟を視界から消し去ろうとしたが、向こうはそれを受け入れようとはしなかった。

俺が軽くあしらえばあしらうほど、ますます食い下がってきた。