白銀のカルマ

『……翼すまなかった!!この通りだ許してくれ!父さんが悪かった!!』

 弱々しい腕でしがみつき必死に謝り続けたが、それでも息子は冷たい視線を向けたままだった。

『……謝れば許してもらえるとでも思ったか。…死んでも足りねぇだろ』

弥生の時に後悔したはずなのに、この時も弱り切った人間に捨て台詞を吐き、更生の機会を与えることなかった。

『待ってくれ、翼……!』

これが父と息子が交わした最期のやり取りとなった。

 それ以降、親父の病室に寄り付くことはなく、在宅に切り替わってからの介護も全部弟に押し付けた。

しかしいくら憎しみにまみれていたとは言え、面倒ごとを全て弟に押し付け、葬式の時だけ当たり前の顔をして出席したのは今でも申し訳なく思っている。

過去を清算するだけの心理的な余裕もなく、憎悪が膨らんでいく一方だったあの頃の自分に一体何が出来たかと聞かれると、今でも分からないが人を許すだけの寛容さを少しだけ持っていれば、二度も誰かの心を死に追いやることだけはなかったのかもしれない。