白銀のカルマ

「……僕もそうだった。」

「え……?」

「今の奥野さんみたいに僕も父親をひどく憎んでいた時期があった……」

本当は一生口を割るつもりはなかったが、今の優一の姿を見ているといてもたってもいられなくなり、自身の苦痛に満ちた過去について語り始めた。

 高校2年の頃、家庭教師の女性と恋に落ちた。

あの頃の自分の想像力は粗末で稚拙な物だったが、世間の目を盗んで彼女と肌を重ねる度、自分達の愛は永遠だと信じて疑わない純情な思いに一切の穢れがなかった。

しかし、その僅かな思いさえも打ち砕かれるような出来事が目の前で起きてしまう。

『……あっ……』

 ある日の夕暮れ、父の書斎で見たものは父と先生の濡れ場だった。

それを見た瞬間、自分の中の何かが壊れた。

何で先生がうちの父と交わっているんだ?
二人して俺をおちょくっているのか?

 流石に子供の前でセックスを続けるだけの度胸はなかったのか、慌てて服を着て座敷に正座させると長々と聞き苦しい言い訳を聞かせた。

『お前らの関係は不健全である』とか『お前の将来を考えてのことだ』だのこの期に及んで聞こえの良い言葉を選び、嘘を重ね、その場を取り繕ったが〝息子の最愛の人″を奪ったことに変わりない。

 俺の目付きは次第に猛獣のように険しい物へと変わっていき、気づけば無言で胸倉を数回揺さぶった後、拳をお見舞いしていた。