白銀のカルマ

「ふぅ………」

 深夜、一人書斎でウイスキー片手に昼間のことを回想していた。

〝うちの兄と恋人関係にあったから許せなかったんです″

実の兄を愛していたという幹枝。

結ばれないと知りながら、優しくて頼りがいのある兄に対し、幼い頃からずっと〝恋心″を抱いていた。

兄・篤彦は恋愛や遊びに一切目もくれず、勉学とただひたすら向き合う真人間だった。

あまりにも浮いた話がないので、次第に幹枝は〝兄は女性を愛したり、結婚したりしない″と錯覚するようになってしまった。

『私はある時、見てしまったんです……。』

 大学1年生の頃。

クリスマスのプレゼントを渡すため、兄に極秘でマンションの前まで行き、物陰に隠れて兄の帰りを待っていたところ信じがたい光景を見てしまう。

兄は女が仲睦まじい様子で、こっちを向いて歩いてきた。

しかもその女の顔と声には身に覚えがあった。

〝篤彦さん″

……その女は紛れもなく恵莉花だった。
自分が知らないうちに、二人は着々と愛を育んでいたのだ。

動揺した幹枝は直視することが出来ず、気づけば声を抑えてその場で泣いていた。

 走って逃げ帰る途中、渡すつもりだったプレゼントを落としてしまい、不覚にも二人に後ろ姿を見られてしまう。

〝幹枝?幹枝?どうしたの?″

 泣き腫らして帰宅した娘を見た母は心配したが、理由を触れられたくなかった若かりし頃の幹枝は自分の部屋に閉じこもり、一人で負の感情を肥大させていった。

〝許せない……。″

何とかして兄から恵莉花を引き放さねば、と心は一気に復讐の炎に包まれた。