白銀のカルマ

『どういうことなの?花蓮さん…』

『彼の言動がおかしくなったのは、おじさんの葬儀から数か月後くらいです…』

彼女の話によると、正徳と花蓮が慕っていたおじさんが発狂死したことを皮切に死への絶大な興味を示すようになったと言うのだ。

『おじさんはおそらく苦しかったの…。自分はこの国のために研究を頑張っているつもりだったのに、それが…あの一瞬の出来事で全部、全部打ち砕かれた……。正徳さんもきっと同じような感覚が心の中にあったんだと思います』

『………』

『何故、争いはいつも、命を奪っていくの…』

【どれだけ時が流れようと僕の罪は決して消えません。罪なき人の命を奪った罪は】

『私は先が長くないんです。こんな立場でこんなこと言うのはおかしいかもしれませんが、うちの次女は確かに正徳さんと私の子です。どうか罪なき無垢な子ども達だけでもお助け下さい』

正徳の愛人は、美鈴に何度も何度も頭を下げた。

美鈴自身も相当辛い立場にあったが、たとえどんな状況でも他人を冷たく突き放すということは、自身の辞書になかった。

愛人に深く同情した美鈴は娘らを引き取ることにしたが、長女との養子縁組について父から猛反対を受けた。

『………そんな息子と何の繋がりもない子どもを引き取るわけにいかん』

弟を殺され、精神的に傷ついた子ども達のケアと、廃人同様になってしまった母の介護で疲れ切った美鈴に父を説得する気力は少しも残されていなかった。

正直、この状況で子どもを引き取るのは、体力的にも精神的にもこたえることだったが、それでも必死で里親を探し回った。

手あたり次第に知り合いに声をかけてはみたものの、悉く断られるのが現実であり冷たく突き放されたり、思いやりの心を蹂躙する者まで現れた。

必死の努力も実を結ばず、気分が落ち込む美鈴。

心身共に限界が訪れていた美鈴の前に一人の救世主が現れる。

『久しぶり』

『……天明さん!』

 正徳の仏壇に手を合わせるために、又従兄である京塚天明が自宅にやって来たのだ。

美鈴は彼の顔を見た瞬間、あることを思い出す。

確か天明は実業家で年収1000万円を超える高給取りだ。

経済的な面は難なくクリアしているので、ダメ元で里親の件をすぐさま持ち出してみた。

提案したその瞬間、あることを思い出し、言葉に詰まった。

『あ、ご結婚されてたわよね』