白銀のカルマ

ブシャァアアアアアアアアアアアア・・・・・・・・・ッ

刃物が激しく切りつけたものは頼子の頸動脈だった。

首の皮膚の肉は裂けそこから勢いよく血液が飛び散った。

近くにいた幹枝は産みの親の返り血を浴びることになったが、警察の御用になる姿を再び見ることはなかった。

最愛の息子の死を目の前で見た祖母・麻子は廃人同様になってしまい、娘の美鈴はその看病に追われた。

健正にも悔しいと言う感情はあったが、それは世継ぎがいなくなってしまったことに対する惜しさであり、子を失った親の感情とは程遠かった。

せっかく愛人に付け回されなくなったと言うのに、英雄死した息子が生前二重生活をしていたせいで、ついでに自分の〝愛人″や〝隠し子″がいることがばれそうになり、肝を冷やしたことをむしろ根に持っていた。

あの事件の後、叔母・和歌子は正徳との籍を抜き、滝川家を去った。

そのおかげで従妹の香織とは音信不通となり、結局小学校卒業まで会うことはなかった。

晒し物になる原因を作った正徳の愛人は訃報を聞きつけると、すぐさま滝川家に出向き、仏壇に手を合わせた。

美鈴と何か話し込んでいたが、二人はどうやら初対面ではなく幼い頃からの顔見知りのようで、高校時代に一時期交際もしていたようだ。

昔、よく二人を遊んでくれたおじさんの葬儀で再会を果たしてから一気に再燃したと語る愛人だったが、彼女の目には涙が溢れ、今にも零れ落ちそうだった。

そして、彼女は自身の過ちを酷く責めた。

『私の罪は不貞だけじゃありません…。正徳さんが自殺願望があるのを知ってたのに、何もしなかった……。私が殺したも同然なんです……』