白銀のカルマ

けれどこれから地獄しか待っていない。

少しだけ夢を見せてやろう。

それから奈落の底へ突き落してやるのだ。

二度と立ち上がれないように。

自分に楯突くとどんな目に遭うか思い知らせてやると強く意気込んだ。

孫娘の一大事ですら自分の権力を誇示する材料に使おうとする非常さは、何年経っても健在だった。

 それからほどなくして、幹枝を誘拐した犯人が見つかった。

院長の予想通りあの愛人だった。

院長の愛人・大島頼子は誘拐罪と監禁罪で実刑で5年の判決を受けた。

頼子は法廷で誘拐した理由を語ったが、妄言として片づけられ報復に失敗した挙句、自身の人生はめちゃくちゃになってしまった。

頼子が出所する頃には2歳だった幹枝も7歳になっていた。

あの一件があったせいでますます周囲は幹枝を丁重に扱うようになり、〝ちょっと甘やかしすぎなのでは…″と言う意見も上がったが、それでも手を緩めることはなかった。

欲しい物は何でも手に入る。

些細なことでも褒められる。

クリスマスや誕生日やお正月は暖炉のある暖かい部屋で過ごし、行きたいところがあれば、どこでも連れていってもらえる。

優しい母、優しい祖父母、優しい叔父、そして優しくて格好いい自慢の兄。

私はとにかく幸せだった。

そして何より今日は大好きな従妹・香織に会える日。

幼い幹枝は胸を躍らせ『病院創立記念パーティー』向かった。

「……ごめんなさい、ここからちょっと逸れるんですけどね。」

幹枝は、大勢の病院関係者や身内が詰めかけたあの『病院創立記念パーティー』事件について語り出す。

『これからの繁栄と発展を祝って……乾杯!』

 司会者がワイングラスを高々と掲げた時だった。

『キャアアアアアアア!!!』

会場の後ろの方から女性の悲鳴が聞こえた。
後ろを振り向くと、そこには刃物を持った女が立っていたのだ。

会場は蜂の巣をつついたように、一気に騒然となった。

『………ッ!』

美鈴は篤彦と幹枝を抱きしめ、安全な場所へ避難させた。

『みなさん、落ち着いてください!!!』

司会者は必死で誘導するも、パニックを起こした集団の耳には無効だった。

女も自分の行く手を阻む者を手あたり次第に切りつけながら、人波をかき分けた。

そして半狂乱のまま会場の真ん中でこう叫んだ。