白銀のカルマ

 これで一件落着。

自分との関係を裏付ける決定的な証拠は何一つ無くなった。

都合の悪いことを言おうものなら、後は死んでもらうだけ。

反抗的な態度を取った場合も、あの手この手で痛めつけるつもりでいたが、何の波乱もなく丸2年の月日が経とうとしていた。

すり替えられた赤ん坊は〝幹枝″と名付けられ、滝川家で何不自由なく育てられた。

しかし、そんなある日事件は起こる。

美鈴が子供部屋で居眠りをしていた時だった。

少し開いた窓から目指し帽を被った人物が乱入し、まだ2歳だった幹枝を連れ去ったのだ。

『キャ―!!!』

身代金目的の犯行と思われたが一切金銭の要求も声明文もなかったため、犯人像も動機もはっきりしないまま、いたずらに時間だけ過ぎた。

連れ去られた幹枝は当時2歳だった為、一週間も行方が分からなくなった時は生きた心地がしなかった。

母・美鈴は自分を責め、祖母・麻子は憔悴、兄・篤彦は以前に比べ食が細くなった。

しかし、祖父・健正は至って冷静だった。

家長としての余裕の表れのようにも見えたが、唯一犯人の目星がついていたからだった。

(あの女……。ただで済むと思うなよ)

多岐に渡って自分を脅迫してきた愛人・大島頼子によるものだと、薄々勘付いていた。

でもきっと頼子なら殺したりはしない。

自分の娘として育てているはずだ。